なおもう一つ、私が敏子を嫉妬する理由のあること―――というのは、木村が彼女をも愛しているかも知れないという疑いのあること―――を、夫に知られるのを何よりも私は恐れた。
夫自身も、「モシ僕ガ木村デアッタトシテ、ドッチニヨケイ惹キ付ケラレルカトイエバ、ソレハ、年ハ取ッテイルケレドモ母ノ方デアルヿハ確カ」であると云いながら、「ダガ木村ハドウトモ云エナイ」と云い、「サシアタリ母ノ歓心ヲ買イ、母ヲ通ジテ敏子ヲ動カソウトシテイル」かも知れないと、多少疑念を挟んでいた時もあった。
で、私は夫にそういう疑念を抱かせることを最も嫌った。