そして、私の心に重大な決意ができ上るようになったのは四月上旬、四日、五日、六日、あたりであったと思う。
夫に誘導されて一歩一歩堕落の淵に沈みつつあった私であるが、まだそれまでは、夫の要請黙しがたく苦痛を忍んで不倫を犯しているかのように、―――そうしてそれは舊式な道徳観から見ても、婦人の亀鑑と仰がれてもよい模範的行為であるかのように、自分を欺いていたのであったが、その時あたりから、私は全く虚偽の仮面を投げ捨ててしまった。
私はきっぱりと、自分の愛が木村の上にあって夫の上にはないことを、自ら認めるようになった。