これは一つには、運が悪いだけではなく、何故か相手の人が故意に平中に遇うことを避けているらしいからなので、そのために平中は一層懊れていた。
こう云う場合、召使われている女童などを手馴ずけて文の取次をして貰うのが常套手段で、もちろんその辺にぬかりがあるのではなかったが、それも、今日までに二三度持たせて遣ったのに、全然手答えがないのであった。
いつも平中は女童を掴まえて、「たしかに渡してくれたかね」と、しつッこく念を押すのであるが、「えゝ、お渡しゝたことはしたんですけれど、………」と、女童は口ごもりながら気の毒そうに平中の顔を見るのである。