帰り途に目あてのある平中は、自分も好い加減に退り出たいのであったが、時平は彼と差向いになると女の噂を持ち出すのがおきまりで、何か最近に収穫はなかったか、己の前で隠すには及ばぬぞ、と云うような風に切り出すので、彼も心ではそわ/\しながら、ちょっと座を立つしおを失って、それから又ひとしきり、親しい友達同士でなければ交せないような秘話がはずんだ。
尤も平中は、近頃侍従の君の一件が大臣の耳に這入っていはしないか、今にそのことを持ち出してチクリとやられるのではあるまいか、と云う不安があるところから、その晩はどうも調子が乗らず、内々警戒していたのであったが、時平は何と思ったか、
「時に、折入ってあなたに聞きたいことがあるんだが、………」