時平は何処かゝらそう云う噂を聞き、而もその人が時々夫の眼を忍んで情人を呼び込んでいると云うこと、その情人とは別人ならぬ平中であるらしいことをチラと小耳に挟んだので、それがほんとうなら、左様な美女をよぼ/\の老翁や位の低い平中如きに任しておくと云う手はない、須く乃公が取って代るべしである、と、ひそかに野心を燃やしていたところへ、そんなことゝは知らぬ平中がひょっこり今夜御機嫌伺いに罷り出たのであった。
後段に述べるが如く、時平はやがて望みを達して自分よりも十ほど若い此の義理の伯母を、見事伯父から奪い取って自分のものにしたのであるが、大和物語には此の夫人がまだ国経の妻であった時代に、平中が彼女に贈ったと云う和歌を載せている。
春の野に緑にはえるさねかづら