目下のところ、已むに已まれぬ行きがゝりで侍従の君を追い廻すような羽目になり、へんに懊らされているものだから、一途に心がその方へばかり向いているのであるけれども、前者との縁も決して完全に切れてしまっている訳ではなかった。
殊に思いもかけない時に、そう云う風に時平に尋ねられて見ると、又改めてその人のことが思い出されて来るのであった。
「いや、先程も申しました通り、お逢いしたのは一二度でございますので、たしかなことは申せませんけれども、すぐれてめでたい御器量であられることは、先ずほんとうでございますな」