そして、大臣の邸とは比べものにならない手狭な館ではあるけれども、一夕我が方へ臨席を仰いで饗宴を催し、心の限りもてなしをして、感謝の念の萬分の一でも酌み取って貰えないであろうかと云うことも、考えないではなかったのであるが、なか/\大納言風情の所へなど来てくれそうな人ではないので、申し出ても無駄であろう、却って身の程を弁えぬ失礼な奴と、物笑いになるだけであろう、と、そう思って差控えていた際であったのに、図らずもその人が自ら望んで客人になろうと云い出したのであった。
その翌日から国経の邸は俄に活気づき、大勢の人夫共が出入りし始めた。
もう正月に餘日もないので、大切な客人を迎えるために急いで工匠や園丁を雇い、殿舎の修繕や林泉の手入れにかゝつたのである。