老人は白氏文集を愛読していて、興に乗ずると、こんな工合に文句を暗誦するのであるが、これが出る時はそろそろ酒が循って来た證拠であった。
「………洛陽の児女面は花に似たり、河南の大尹頭は雪の如し。
老来量を節してはいても、もと/\下地は好きな方で、過せばいくらでも過せる国経は、今宵は自分が主人役として容易ならぬ人を迎え、粗相があってはならぬと思うところから、最初のうちは努めて引き締めていたのであったが、何分胸中に抑えきれない喜びが溢れてい、而も客人たちの方から頻りに杯を強いられるので、いつか心の緊張が弛んで、上機嫌になって行った。