主人の妻、大納言の北の方はこう云う座敷の有様を、御簾のうちにいてさっきから隙見していた。
初めのうちは、客人の席のうしろを囲っていた屏風が邪魔になって見えにくかったのであるが、故意にか偶然にか、追い/\騒ぎがはげしくなり、人々が起ったり居たりするにつれて、その屏風の端が少しずつ畳まれて行き、斜かいに開いたので、今は左大臣の姿形がほゞ正面に見えるようになった。
御簾越しにではあるけれども、左大臣はついそこに、北の方とはなゝめに畳三四畳を隔てたあたりに、此方を向いて坐っているのが、ちょうどその前に燈台が据えてあるので、残るところなく分るのであるが、色白のふっくらした顔が酔いのために紅く火照っていて、眉の附け根をとき/″\癇癖が強そうにふるわせるくせはあるけれども、笑うとひどく愛嬌があって、眼もとや口もとに子供のような無邪気さが溢れる。