それかあらぬか、左大臣は御簾のうちにある北の方の顔を、何とかして見届けようとする如く、探るような瞳を挙げてしきりにキョロ/\するのであった。
左大臣の席からはずっと離れた遥かな末座に、別にもう一人、矢張此の御簾のあたりへ密かな視線を注いでいる男があるのを、北の方は疾うから意識していたが、それは云う迄もなく平中であった。
女房たちは勿論それに気が付いていたのであるが、今の場合北の方に憚かって、此の優男の噂をするのを差控えながら、心の中では左大臣と比較して、孰方がより美男子であるかを批判していたでもあろう。