自分は昨夜の饗宴を、平素の左大臣の恩に報いる絶好の機会であると思い、出来るだけのもてなしをしたには違いなかったが、一方では、自分の力に限りがあって、到底左大臣を満足させる程の款待をなし得ないのを、耻かしくも歯痒くも感ずる念が一杯であった。
自分にそう云う自責の心持、―――こんな貧弱な饗応をしたのでは相済まない、何がなもっと喜んで戴くことは、―――と云う心持があった矢先に、左大臣からあゝ云う風に云われ、剰え「物惜しみをするな」とまで云われたのがぐっと答えて、左大臣が所望とあらば、どんな物でも差出す料簡になったのであった。
それに自分は、謎をかけられるまでもなく、左大臣の所望するものが何であるかを、大凡そ察し得たのであった。