一つには左大臣の恩に報い、一つにはいとしい人への罪のつぐないが出来ると思うと、自分は有頂天になった。
そして咄嗟にあゝ云う行動に出てしまった。
………あの瞬間にも、お前はそんなことをしてよいのか、いくら恩返しをすると云っても、餘り寛大過ぎはしないか、………酔った勢で飛んだことをして、覚めてから地団太蹈むのではないか、………お前が愛する人のために献身的になるのはよいが、果してお前はその後の孤独に堪えられるのか、と云う囁きが聞えないでもなかったのであるが、なに構うものか、後のことは後のことだ、善と信じて疑わないなら、酒の勢を借りてゞも断行すべきだ、生きながら死んだ人間になる覚悟をした者が、何で孤独が恐いものか、………と、強いて自ら危惧の念を嘲って、とう/\あの人の袂の端を、左大臣に執らせてしまったのであった。