今は暫く筆を転じて、あの夜あの車の中へ「物をこそ」の歌を投げ入れた平中の方へ叙述を移そう。
平中も亦、国経ほどではなかったにしても、やゝそれに似た、或る後味のほろ苦いものを嘗めさせられたのであった。
もと/\此の事の起りは、去年の冬の或る夜、彼が本院の館に伺候した折、左大臣からあの北の方のことをいろ/\尋ねられたので、ついうっかりと、好い気になっておしゃべりをしたのが始まりであることを思えば、彼は誰を恨むよりも、己れの浅慮を恨まねばならない。
今は暫く筆を転じて、あの夜あの車の中へ「物をこそ」の歌を投げ入れた平中の方へ叙述を移そう。
平中も亦、国経ほどではなかったにしても、やゝそれに似た、或る後味のほろ苦いものを嘗めさせられたのであった。
もと/\此の事の起りは、去年の冬の或る夜、彼が本院の館に伺候した折、左大臣からあの北の方のことをいろ/\尋ねられたので、ついうっかりと、好い気になっておしゃべりをしたのが始まりであることを思えば、彼は誰を恨むよりも、己れの浅慮を恨まねばならない。