もっとはっきり云うならば、一往は忘れていたのだけれども、時平がその人に好奇心を抱いていることが明かになるや否や、意地悪くも一旦失いかけていた興味が、猛然と復活して来たのであった。
彼は去年のあの晩以来、時平が急に伯父の大納言に接近し始め、しきりに歓心を求めるようになり出したのを、何となく不安な気持で眺めながら、それにしてもどう云う積りであろうかと、密かに時平の意図を疑い、事件のなりゆきに注意を怠らなかったのであるが、恰もその矢先に、あの饗宴の話が持ち上り、自分もそれに随行するように命ぜられたのであった。
あの晩、平中は虫が知らすと云うのか、今に何かゞ起るのではないかと云う豫覚があって、最初から憂鬱になっていた。