女が呆れている隙に、平中はすばやく筥を奪い取って一目散に走り去った。
後生大事にその品物を袂のかげに抱えながら、我が家へ逃げ帰った平中は、一と間のうちに閉じ籠ってあたりに誰もいないのを確かめてから、先ずそれを恭しく座敷にすえて、とみこうみした。
これが自分の深くも心を打ち込んだ人の物を入れてある容器かと思うと、直ぐには蓋を開けるのが惜しい気がして、なおよく見ると、普通にあるような皮籠ではなくて、金色の漆の塗ってある立派な筥であった。
女が呆れている隙に、平中はすばやく筥を奪い取って一目散に走り去った。
後生大事にその品物を袂のかげに抱えながら、我が家へ逃げ帰った平中は、一と間のうちに閉じ籠ってあたりに誰もいないのを確かめてから、先ずそれを恭しく座敷にすえて、とみこうみした。
これが自分の深くも心を打ち込んだ人の物を入れてある容器かと思うと、直ぐには蓋を開けるのが惜しい気がして、なおよく見ると、普通にあるような皮籠ではなくて、金色の漆の塗ってある立派な筥であった。