―――「いかで此の人に逢はで止みなんと思ひ迷ひける程に、平中病み付きにけり、さて悩みける程に死にゝけり」と、今昔物語ではそうなっているのである。
尤も、こゝに一つ書き洩らしてならないことは、十訓抄に依ると、侍従の君は本来平中の女であったのを、これも時平が邪魔をして横取りをした、と云うことになっている。
そこで筆者が想像するのに、もと/\此の婦人は本院の館に仕えていた女房なのであるから、恐らくは早くから時平が手を着けていなかった筈はなく、平中はそれを知らずにか、或は知りつゝか、三角関係を結んだのであろう。