それから間もなく洛中の空に黒雲が蔽い廣がって大雷雨が襲来し、風を起し雹を降らして、宮中の此処彼処に落雷した。
満廷の朝臣たちが戦き恐れ、或は板敷の下に這い入り、或は唐櫃の底に隠れ、或は畳を担いで泣き、或は普門品を誦しなどする中で、時平がひとり毅然として剣を抜き放ち、空に向って雷霆を叱咤したのは此の時の話であるが、その後風雨がなお止まず、遂に鴨川の洪水を見るに至った。
法性房尊意も宣旨が三度に及んだので、已むを得ず参内して、法力を以て雷電を取り鎮め、帝のおん悩みを除いたのであったが、その時尊意の乗った車が鴨川の浜にさしかゝると、水が自然に退いて車を通した。