幼年の彼が母をほんとうに美しいと感じたのは、あの、平中に掴まえられて腕に歌を書かれた時のことであった。
あれは渡殿の軒に近く紅梅が綻びていたことを思うと、或る春の日のことであったのは間違いないが、彼が西の対屋の簀子のところで、二三人の女童を相手に遊んでいると、大人の男がニコ/\しながら傍へ寄って来て、
「もし、………もうお母さまにお会いになったんですか」
幼年の彼が母をほんとうに美しいと感じたのは、あの、平中に掴まえられて腕に歌を書かれた時のことであった。
あれは渡殿の軒に近く紅梅が綻びていたことを思うと、或る春の日のことであったのは間違いないが、彼が西の対屋の簀子のところで、二三人の女童を相手に遊んでいると、大人の男がニコ/\しながら傍へ寄って来て、
「もし、………もうお母さまにお会いになったんですか」