彼は几帳のかげで母の膝に抱かれた時、自分の方からも父のことを云い出したことはなかったが、母も、お父さまはどうしていらっしゃる、と云うようなことを、嘗て一度も問うたことはなかった。
それに、あの讃岐にしても、外の女房たちにしても、平中には妙に同情していたらしいのに、国経のことは誰もあまり口にした者はなかったが、その中で乳人の衛門だけが例外であった。
その九
彼は几帳のかげで母の膝に抱かれた時、自分の方からも父のことを云い出したことはなかったが、母も、お父さまはどうしていらっしゃる、と云うようなことを、嘗て一度も問うたことはなかった。
それに、あの讃岐にしても、外の女房たちにしても、平中には妙に同情していたらしいのに、国経のことは誰もあまり口にした者はなかったが、その中で乳人の衛門だけが例外であった。
その九