親子はしばらく、互に眼で探りを入れながら見合っていたが、でもそのうちに、滋幹の心を壓していた恐怖感が次第に和らいで、或る云い知れぬ甘いなつかしい感覚に代った。
それが何に原因するのか滋幹にも最初は分らなかったが、間もなく彼は、あの、母が常に薫きしめていた薫物の香が、此の部屋の中に満ち/\ていることに気づいた。
そして、よく見ると、父がすわっているあたりに、むかし母が身に着けていた袿や、単衣や、小袖や、さま/″\な衣裳が取りちらかしてあるのであった。
親子はしばらく、互に眼で探りを入れながら見合っていたが、でもそのうちに、滋幹の心を壓していた恐怖感が次第に和らいで、或る云い知れぬ甘いなつかしい感覚に代った。
それが何に原因するのか滋幹にも最初は分らなかったが、間もなく彼は、あの、母が常に薫きしめていた薫物の香が、此の部屋の中に満ち/\ていることに気づいた。
そして、よく見ると、父がすわっているあたりに、むかし母が身に着けていた袿や、単衣や、小袖や、さま/″\な衣裳が取りちらかしてあるのであった。