「若様、お父さまの所へいらしって、何をなすっていらっしゃいますか、そうっと覗いて御覧遊ばせ」
と、そう云ったので、滋幹が恐る/\佛間の前へ行って、閾際に跪いて、音を立てぬように障子に手をかけて、一寸ばかりする/\と開けて見ると、正面に普賢菩薩の絵像を懸け、父はそれに向い合って寂然と端坐していた。
滋幹の方には後姿しか見えないのだけれども、暫くじっと窺っていても、父は経を読むのでも、書を繙くのでも、香を薫くのでもなく、たゞ黙然と坐っているだけなので、
「若様、お父さまの所へいらしって、何をなすっていらっしゃいますか、そうっと覗いて御覧遊ばせ」
と、そう云ったので、滋幹が恐る/\佛間の前へ行って、閾際に跪いて、音を立てぬように障子に手をかけて、一寸ばかりする/\と開けて見ると、正面に普賢菩薩の絵像を懸け、父はそれに向い合って寂然と端坐していた。
滋幹の方には後姿しか見えないのだけれども、暫くじっと窺っていても、父は経を読むのでも、書を繙くのでも、香を薫くのでもなく、たゞ黙然と坐っているだけなので、