父がうしろを振り返ったら見付けられたかも知れなかったが、父の様子は、歩きつゝなお冥想に沈んでいるような工合で、いつの間にか館の門を出て、何かはっきり目指すところがあるらしく、すうっと歩いて行くのであった。
八十歳の老翁と七八歳の幼童の足であるから、そう遠くまで行ったのではないであろうが、それでも相当の道のりを来たように滋幹は感じた。
彼は父からはずっとおくれて見え隠れに跡をつけたが、深夜の路上には親子の外に全く人影が絶えていたし、父の姿が遥かに白く月光を反射していたので、見失う恐れはなかった。
父がうしろを振り返ったら見付けられたかも知れなかったが、父の様子は、歩きつゝなお冥想に沈んでいるような工合で、いつの間にか館の門を出て、何かはっきり目指すところがあるらしく、すうっと歩いて行くのであった。
八十歳の老翁と七八歳の幼童の足であるから、そう遠くまで行ったのではないであろうが、それでも相当の道のりを来たように滋幹は感じた。
彼は父からはずっとおくれて見え隠れに跡をつけたが、深夜の路上には親子の外に全く人影が絶えていたし、父の姿が遥かに白く月光を反射していたので、見失う恐れはなかった。