八十歳の老翁と七八歳の幼童の足であるから、そう遠くまで行ったのではないであろうが、それでも相当の道のりを来たように滋幹は感じた。
彼は父からはずっとおくれて見え隠れに跡をつけたが、深夜の路上には親子の外に全く人影が絶えていたし、父の姿が遥かに白く月光を反射していたので、見失う恐れはなかった。
路は、初めはいかめしい築地の邸がつゞいていたのが、だん/\みすぼらしい網代の塀や、屋根に石ころを置いた佗びしい低い板葺の家などになったが、それも次第に疎らに、ところ/″\に水たまりだの空地だのが多くなり、芒やその他の秋草が丈高く伸びていたりした。