彼は父からはずっとおくれて見え隠れに跡をつけたが、深夜の路上には親子の外に全く人影が絶えていたし、父の姿が遥かに白く月光を反射していたので、見失う恐れはなかった。
路は、初めはいかめしい築地の邸がつゞいていたのが、だん/\みすぼらしい網代の塀や、屋根に石ころを置いた佗びしい低い板葺の家などになったが、それも次第に疎らに、ところ/″\に水たまりだの空地だのが多くなり、芒やその他の秋草が丈高く伸びていたりした。
そしてそれらの叢にすだく虫の音が、二人が近づくとふっと止み、遠のくと又鳴き出しながら、町はずれへ行けば行くほど雨のようにしげく喧しくなって行った。