そしてそれらの叢にすだく虫の音が、二人が近づくとふっと止み、遠のくと又鳴き出しながら、町はずれへ行けば行くほど雨のようにしげく喧しくなって行った。
そのうちに、家が一軒もなくなって、見渡す限りぼう/\と草の生えた中に、細い野道がひとすじうねっている所へ出た。
一本道であるけれども彼方へ曲り此方へ曲りしている上に、草が人間の背よりも高く、父の姿がとき/″\それに没してしまうので、今度は滋幹は一二間の距離まで近寄って行ったが、両側から路の方へ蔽いかぶさっている草を掻き分けながら行くので、袂も裾もしたゝか露に濡れて、つめたい雫が襟もとまで沁み入るのであった。