父は、小川に橋のかゝった所へ来ると、それを渡って、なお真っ直ぐにつゞいている路の方へは行かないで、川のふちへ降りて、少しばかり河原のようになっている砂地を、川下の方へ歩き出した。
と、橋から一丁ばかり下のちょっと小高く盛り上った平地に、土饅頭が三つ四つ築いてあって、それらはいずれも土が柔かで新しく、頂上に立てゝある卒塔婆も真っ白な色をしており、折柄の月に文字まではっきり分るのであった。
卒塔婆を立てないで、代りに小さな松杉などを植えたのもあり、土饅頭でなく、柵で囲って、石を積み上げて、五輪の塔を据えたのもあり、簡単なのは、屍体を一枚の莚で蔽うて、しるしの花を供えたゞけのものもあったが、中には又、此の間の野分で卒塔婆が倒れ、土饅頭の土が洗われて、屍体の一部が下から露出しているのもあった。