そして、程なく滋幹は、父の足が止まったので、自分もピタリと歩みをとゞめた瞬間に、体じゅうが総毛立つものを眼前に見た。
月の光と云うものは雪が積ったと同じに、いろ/\のものを燐のような色で一様に塗り潰してしまうので、滋幹も最初の一刹那は、そこの地上に横わっている妙な形をしたものゝ正体が掴めなかったのであるが、瞳を凝らしているうちに、それが若い女の屍骸の腐りたゞれたものであることが頷けて来た。
若い女のものであることは、部分的に面影を残している四肢の肉づきや肌の色合で分ったが、長い髪の毛は皮膚ぐるみ鬘のように頭蓋から脱落し、顔は押し潰されたとも膨れ上ったとも見える一塊の肉のかたまりになり、腹部からは内臓が流れ出して、一面に蛆がうごめいていた。