尤もこゝではそんなに深く説き及ぶ迄もないのであるから、たゞ順序として、物語の進行に必要な面にだけ触れて置こう。
不浄観のことが分り易い仮名交り文で書いてある書物は、他にもあるかも知れないが、筆者が知っているのでは、世に慈鎮和尚の著とも云い、又勝月房慶政上人の著とも云う「閑居の友」がある。
此の書は往生伝や発心集に洩れている往生発心者の伝記、名僧智識の逸話等を集録したもので、その巻の上の、「あやしの僧の宮づかひのひまに不浄観をこらす事」、「あやしのをとこ野はらにてかばねを見て心をおこす事」、「からはしかはらの女のかばねの事」、その巻の下の、「宮ばらの女房の不浄のすがたを見する事」等を読めば、不浄観と云うのがどう云うことか大凡その見当はつくのである。