使は合点が行かないで、何をするかと窺っていると、彼方此方を蹈み分けて行って、云いようもなく腐りたゞれた死人の傍に寄って、或は眼を閉じ、或は眼を開いて祈念を凝らし、たび/\それを繰り返しつゝ声も惜しまず泣くのであったが、夜もすがらそう云う風にして、暁の鐘の声が聞える頃に、漸く涙を押し拭うて帰るのであった。
使者は自分も感激して涙を流しながら戻って来たので、どうであったと上人が尋ねると、さあ、その事でございます、あの男がいつも打ち沈んでしお/\としていましたのも道理でございます、実はこれ/\しか/\の次第で、夕暮になると見えなくなりますのも、そのためだったのでございます、あゝ云う貴い聖の行いをしていた人を、妄りに疑った罪の程も恐ろしゅう存ぜられまして、と云うので、主の上人も驚いて、その後はその中間僧を敬うて、常人のようには扱わなかった。
すると或る朝、食事に粥をこしらえて持って来たので、あたりに人がいないのを見すまして、お前は不浄観を凝らすことがあると云う噂だが、ほんとうかね、と尋ねると、どう致しまして、左様なことは学問のある偉いお方がなさることです、私がそのようなことの出来る人間かどうか、様子でもお分りでございましょう、と云うのであった。