使者は自分も感激して涙を流しながら戻って来たので、どうであったと上人が尋ねると、さあ、その事でございます、あの男がいつも打ち沈んでしお/\としていましたのも道理でございます、実はこれ/\しか/\の次第で、夕暮になると見えなくなりますのも、そのためだったのでございます、あゝ云う貴い聖の行いをしていた人を、妄りに疑った罪の程も恐ろしゅう存ぜられまして、と云うので、主の上人も驚いて、その後はその中間僧を敬うて、常人のようには扱わなかった。
すると或る朝、食事に粥をこしらえて持って来たので、あたりに人がいないのを見すまして、お前は不浄観を凝らすことがあると云う噂だが、ほんとうかね、と尋ねると、どう致しまして、左様なことは学問のある偉いお方がなさることです、私がそのようなことの出来る人間かどうか、様子でもお分りでございましょう、と云うのであった。
上人が重ねて、いや、お前のことは今では皆が知っている、愚僧もかね/″\心のうちではお前を貴くも有難くも思っていたのであるから、隠さずに云ってくれるがよい、と云うと、左様ならば申しますが、と云って、実は何事も深くは存じませぬけれども、少しばかり心得ていることがございます、と云う。