云って見れば、いつでもじっと眼の前にある虚空の一点を視詰めたきりの人のようであった。
そんな訳なので滋幹は、最後の一年間ばかりの父の精神生活について、父自身からは何も聞き得なかったのであるが、でも、父が一時止めていた酒を再び嗜むようになったこと、依然として佛間に閉じ籠ってはいたけれども、もうその壁には普賢菩薩の像が見えなくなっていたこと、そして経文を読む代りに、いつか又白詩を吟ずるようになっていたこと、等々には心づいていたのであった。
その十一
云って見れば、いつでもじっと眼の前にある虚空の一点を視詰めたきりの人のようであった。
そんな訳なので滋幹は、最後の一年間ばかりの父の精神生活について、父自身からは何も聞き得なかったのであるが、でも、父が一時止めていた酒を再び嗜むようになったこと、依然として佛間に閉じ籠ってはいたけれども、もうその壁には普賢菩薩の像が見えなくなっていたこと、そして経文を読む代りに、いつか又白詩を吟ずるようになっていたこと、等々には心づいていたのであった。
その十一