それにしても、前の夫の老大納言が彼女に焦れつゝ苦しみ悶えて死んだことや、平中が彼女に背かれた悔し紛れに侍従の君を追い廻して、とう/\そのために命を落す羽目になったことなどを聞いては、どんな感想を持ったことであろうか。
左大臣が権勢を恣にしていた間こそ、彼女も本院の北の方として多くの人の崇敬を集め、羨望の的となっていたであろうが、左大臣の死後は、恐らく昔日の栄華も一朝の夢と化して、萬事に不如意を喞つ身の上となったであろう。
彼女に凄じい熱情を注いだ男たちが次々に死に、左大臣の一家一門が菅丞相の祟りに依って一人々々斃れ、最後にいとし子の敦忠までが取られて行ったのを見ては、彼女もそゞろに無常の風が身に沁みたであろう。