そして、それには外に此れと云う目的があったのではなかったけれども、そっちの道を下って行けば西坂本へ出るのであるから、母の住む里はどんな所か、それとなく様子を探っておきたい、ぐらいなことは念頭にない訳でもなかった。
滋幹が坂路へかゝったのは、日がよう/\西に傾きかけた頃で、水呑峠の地蔵堂のあたりを過ぎ、音羽の滝のひゝきを耳にしながら麓に着いた時分には、いつしか空になまめかしいおぼろ月が輝き初めていた。
かの壬生忠岑の歌に、
そして、それには外に此れと云う目的があったのではなかったけれども、そっちの道を下って行けば西坂本へ出るのであるから、母の住む里はどんな所か、それとなく様子を探っておきたい、ぐらいなことは念頭にない訳でもなかった。
滋幹が坂路へかゝったのは、日がよう/\西に傾きかけた頃で、水呑峠の地蔵堂のあたりを過ぎ、音羽の滝のひゝきを耳にしながら麓に着いた時分には、いつしか空になまめかしいおぼろ月が輝き初めていた。
かの壬生忠岑の歌に、