とあるのは、此の滝を詠んだのであると云うが、滝の末が音羽川と云うひとすじの流れになっており、道はその川の岸に沿うて下っているので、何心なく辿って行くと、低い籬を結いめぐらした構えの向うに、前栽の木立ちを透かして別荘風の家の見える所へ出た。
滋幹は、垣根が朽ちて倒れているのを跨ぎ越え、構えの内へ二た足三足這入って行って、暫くあたりを窺っていたが、森閑として人の住んでいそうなけはいもない。
東の方には比叡の峰つゞきの丘が聳え、西の方がだら/\と緩やかな斜面になっている地勢を占めて、池を掘り、石を据え、築山を作り、遣り水を引きなどした庭の趣は、むかしはどんなにか結構を極めていたのであろうが、今は凄じく荒れ果てゝ、地面には雑草が生いしげり、木々の幹には蔦葛の蔓が網のように絡み着いているのであった。