と、その時、梟の啼く声に交って、微かにせゝらぎの音が聞えるようなので、その音をたよりに、彼は漸く身を起して遣り水の流れに沿いながら、池を廻り、築山を越え、植込みの間をくゞって行くと、果して崖に一条の滝が懸っていた。
崖の高さは七八尺もあるであろうか、急な断崖ではなくて、なだらかな勾配のところ/″\に形の面白い石を配置し、落ちて来る水がそれらの間を屈曲しつゝ白泡立って流れるように作られてい、崖の上からは楓と松が参差と枝をさしかわしながら滝の面へ蔽いかぶさっているのであるが、蓋し此の滝は、さっきの音羽川の水を導いて来て、こゝへ堰き入れたのであろう。
滋幹はそう心づくと、あの、「音羽川せき入れておとす」と云う伊勢の歌が胸に浮かんだ。