でも、彼がしきりに否定しようとするにも拘らず、月の面を蔽うていた雲の羅が少しずつ剥がれて行くに従い、だん/\とその人影は刻明になって来て、半信半疑であったものが、今は尼であることに紛れもなかった。
彼女が被っている帽子は、ちょうど後世のお高祖頭巾のように首の全部を覆い隠して、肩の上まで垂れているので、顔はこゝからは分らないけれども、しょんぼり彳んで空の方を仰いでいるのは、花に見惚れているのであろうか、花の上にある月にあこがれているのであろうか。
………と、尼はしずかに花の下を去って、その崖を下り始めた。