そうしてさながら彼の会社の重役に対する時のごとくおどおどした態度で云った。
なぜなら、その紳士は全く会社の重役に似た堂々たる人柄だったので、彼は一と目見た瞬間に、「往来で物を云いかける無礼な奴」と云う感情を忽ち何処へか引込めてしまって、我知らず月給取りの根性をサラケ出したのである。
紳士は獵虎の襟の付いた、西班牙犬の毛のように房々した黒い玉羅紗の外套を纏って、(外套の下には大方モーニングを着ているのだろうと推定される)縞のズボンを穿いて、象牙のノッブのあるステッキを衝いた、色の白い、四十恰好の太った男だった。