寺男の話では鵙屋の家はとうに没落してしまい近年は稀に一族の者がお参りに来るだけであるがそれも琴女の墓を訪うことはほとんどないのでこれが鵙屋さんの身内のお方のものであろうとは思わなかったという。
するとこの仏さまは無縁になっているのですかというと、いえ無縁という訳ではありませぬ萩の茶屋の方に住んでおられる七十恰好の老婦人が年に一二度お参りに来られます、そのお方はこのお墓へお参りをされて、それから、それ、ここに小さなお墓があるでしょうと、その墓の左脇にある別な墓を指し示しながらきっとそのあとでこのお墓へも香華を手向けて行かれますお経料などもそのお方がお上げになりますという。
寺男が示した今の小さな墓標の前へ行って見ると石の大きさは琴女の墓の半分くらいである。