二つは低い石甃の壇の上に並んで立っていて春琴女の墓の右脇にひと本の松が植えてあり緑の枝が墓石の上へ屋根のように伸びているのであるが、その枝の先が届かなくなった左の方の二三尺離れたところに検校の墓が鞠躬加として侍坐するごとく控えている。
それを見ると生前検校がまめまめしく師に事えて影の形に添うように扈従していた有様が偲ばれあたかも石に霊があって今日もなおその幸福を楽しんでいるようである。
私は春琴女の墓前に跪いて恭しく礼をした後検校の墓石に手をかけてその石の頭を愛撫しながら夕日が大市街のかなたに沈んでしまうまで丘の上に低徊していた