これは大阪に限ったことでなく都会の通有性だけれども江戸では女でも浅黒いのを自慢にしたくらいで色の白きは京阪に及ばない大阪の旧家に育ったぼんちなどは男でさえ芝居に出て来る若旦那そのままにきゃしゃで骨細なのがあり、三十歳前後に至って始めて顔が赭く焼けて来て脂肪を湛え急に体が太り出して紳士然たる貫禄を備えるようになるその時分までは全く婦女子も同様に色が白く衣服の好みも随分柔弱なのである。
まして旧幕時代の豊かな町人の家に生れ、非衛生的な奥深い部屋に垂れ籠めて育った娘たちの透き徹るような白さと青さと細さとはどれほどであったか田舎者の佐助少年の眼にそれがいかばかり妖しく艶に映ったか。
この時春琴の姉が十二歳すぐ下の妹が六歳で、ぽっと出の佐助にはいずれも鄙には稀な少女に見えた分けても盲目の春琴の不思議な気韻に打たれたという。