いつも小用に立つ時には黙って春琴が出て行くのをそれと察して追いかけながら戸口まで手を曳いて連れて行き、そこに待っていて手水の水をかけてやるのに今日は佐助がうっかりしていたのでそのまま独り手さぐりで行ったのである。
「済まんことでござりました」と佐助は声をふるわせながら、厠から出て手水鉢の柄杓を取ろうと手を伸ばしている少女の前に駈けて来て云ったが春琴は「もうええ」と云いつつ首を振った。
しかしこういう場合「もうええ」といわれても「そうでござりますか」と引き退っては一層後がいけないのである無理にも柄杓を毮ぎ取るようにして水をかけてやるのがコツなのである。