思うに盲目の少女は幸福な家庭にあってもややもすれば孤独に陥り易く憂鬱になりがちであるから親たちはもちろん下々の女中共まで彼女の取扱いに困り、何とかして心を慰め気を晴らさせる術もあらばと苦慮していた矢先たまたま佐助が彼女と趣味を同じゅうすることを知ったのである。
大方こいさんの我が儘に手を焼いていた奥の奉公人たちは佐助にお相手役をなすり付けて少しでも自分たちの荷を軽くしようという考から、何と佐助どんは奇特なものではござりませぬかあれをせっかくこいさんが仕込んでおやりなされましたらどうでござります定めし本人も冥加に余り喜ぶことでござりましょうなどと水を向けたのではなかったであろうか。
ただし下手におだてるとツムジを曲げる春琴であるから必ずしも周囲の仕向けに乗せられたのではないかも知れぬさすがに彼女もこの時に至って佐助を憎からず思うようになり心の奥底に春水の湧き出づるものがあったのかも知れぬ。