ただし下手におだてるとツムジを曲げる春琴であるから必ずしも周囲の仕向けに乗せられたのではないかも知れぬさすがに彼女もこの時に至って佐助を憎からず思うようになり心の奥底に春水の湧き出づるものがあったのかも知れぬ。
何にしても彼女が佐助を弟子に持とうと云い出してくれたのは親兄弟や奉公人共に取って有難いことだったいくら天才児だと云っても十一歳の女師匠が果して人を教えることが出来るかどうかは問う所でない、ただそういう風にして彼女の退屈が紛れてくれれば端の者が助かる云わば「学校ごッこ」のような遊戯をあてがい佐助にお相手を命じたのである。
だから佐助のためよりも春琴のために計らったことなのであるが結果から見れば佐助の方が遥かに多く恩沢に浴した。