誰しも一往佐助に疑いを持って行くところであるけれども親たちにしても去年の春琴の言葉があるのでよもやと思ったのであるそれにそう云う関係があればなかなか人前を隠し切れぬもの、経験の浅い少女と少年がどんなに平気を装っても嗅ぎ付かれずにはいないものだが佐助が同門の後輩となってからは以前のように夜更けるまで対坐する機会もなく時折兄弟子の格式をもっておさらいをしてやるぐらいなものその他の時はどこまでも気位の高いこいさんであって、佐助を遇するに手曳き以上の扱いはしていないようなので奉公人共も二人の間に間違いがあろうとは思っても見なかったむしろ主従の区別が有り過ぎ情味が乏しいほどに思えた。
しかし佐助に聞いたらば様子が知れよう相手はきっと検校の門下生であろうと見当をつけたが佐助も知らぬ存ぜぬの一点張りで、自分の身に覚えのないのはもちろん誰といって心あたりもないと云う。
けれどもこの時御寮人の前へ呼ばれた佐助の態度がオドオドして胡散臭いのに不審が加わり問い詰めて行くと辻褄の合わないことが出て来て実はそれを申しましてはこいさんに叱られますからと泣き出してしまった。