けれどもこの時御寮人の前へ呼ばれた佐助の態度がオドオドして胡散臭いのに不審が加わり問い詰めて行くと辻褄の合わないことが出て来て実はそれを申しましてはこいさんに叱られますからと泣き出してしまった。
いやいやこいさんを庇うのはよいが主人の云い付けをなぜ聴かぬ隠し立てをしてはかえってこいさんのためになりませぬ是非相手の名を云ってごらんと口を酸ッぱくしても云わぬそれでも結局のところ相手はやはり当の本人の佐助であることが言外に酌み取れた決して白状しませぬとこいさんに約束した手前を恐れて明瞭には云わないのだがそれを察してもらいたそうに云うのであった。
鵙屋夫婦は出来てしまったことは仕方がないしまあまあ佐助だったのはよかったそのくらいなら去年縁組をすすめた時なぜあのような心にもないことを云ったのやら娘気というものはたわいのないものと愁いのうちにも安堵の胸をさすり、この上は人の口の端にかからぬうち早く一緒にさせる方がと改めて春琴に持ちかけてみると、またしてもそんな話はいやでござります去年も申しましたように佐助などとは考えてもみませぬこと、私の身を不憫がって下さいますのは忝うござりますがいかに不自由な体なればとて奉公人を婿に持とうとまでは思いませぬお腹の子の父親に対しても済まぬことでござりますと顔色を変えて云うのであるではそのお腹の子の父親はと聞けばそればかりは尋ねないで下さりませどうでその人に添う積りはござりませぬという。