故に様子を知らない新参の入門者は二人の間を疑う由もなかったというまた鵙屋の奉公人共はあれでこいさんはどんな顔をして佐助どんを口説くのだろうこっそり立ち聴きしてやりたいと蔭口を云ったというなぜ春琴は佐助を待つことかくのごとくであったか。
ただし大阪は今日でも婚礼に家柄や資産や格式などを云々すること東京以上であり元来町人の見識の高い土地であるから封建の世の風習は思いやられる従って旧家の令嬢としての衿恃を捨てぬ春琴のような娘が代々の家来筋に当る佐助を低く見下したことは想像以上であったであろう。
また盲目の僻みもあって人に弱味を見せまい馬鹿にされまいとの負けじ魂も燃えていたであろう。