しかし生え際と云っても額の真中か耳のうしろかどこかにちょっぴり痕が附いたぐらいを根に持って一生相好が変るほどの凄じい危害を与えたと云うのは我が子いとしさに取り上気せた親心にしても余り復讐が執拗に過ぎる第一相手は盲人であるから美貌を醜貌に変ぜしめても当人にはそれほど打撃にはならないもし春琴のみを目的とするなら他にもっと痛快な方法もあろう。
察する所復讐者の意図は春琴を苦しめるに止まらず春琴以上に佐助を悲嘆せしめようとしたのではないかそれはまた結果において最も春琴を苦しめることになるのであるかく考えれば前掲の少女の父親よりも利太郎を疑う方が順当のように思われるがいかに。
利太郎の横恋慕にどの程度の熱意があったか知るべくもないが若年の頃は誰しも年下の女より年増女の美に憧れる恐らく極道の果てのああでもないこうでもないが昂じたあげく盲目の美女に蠱惑を感じたのであろう最初は一時の物好きで手を出したとしても肘鉄砲を食わされた上に男の眉間まで割られれば随分性悪な意趣晴らしをしないものでもない。