幼いおりのことであるからはっきりした印象は残っていないが、まだ山国は肌寒い四月の中旬の、花ぐもりのしたゆうがた、白々と遠くぼやけた空の下を、川面に風の吹く道だけ細かいちりめん波を立てて、幾重にも折り重なった遥かな山の峡から吉野川が流れて来る。
その山と山の隙間に、小さな可愛い形の山が二つ、ぽうっと夕靄にかすんで見えた。
それが川を挟んで向い合っていることまでは見分けるべくもなかったけれども、流れの両岸にあるのだと云うことを、私は芝居で知っていた。
幼いおりのことであるからはっきりした印象は残っていないが、まだ山国は肌寒い四月の中旬の、花ぐもりのしたゆうがた、白々と遠くぼやけた空の下を、川面に風の吹く道だけ細かいちりめん波を立てて、幾重にも折り重なった遥かな山の峡から吉野川が流れて来る。
その山と山の隙間に、小さな可愛い形の山が二つ、ぽうっと夕靄にかすんで見えた。
それが川を挟んで向い合っていることまでは見分けるべくもなかったけれども、流れの両岸にあるのだと云うことを、私は芝居で知っていた。