しかし実際の家は、屋根の形式の割合いに平凡な百姓家で、畑に面したふた間つづきの出居の間の、前通りの障子を明け放しにして、その床の間つきの方の部屋に主人らしい四十恰好の人がすわっていた。
そして二人の姿を見ると、刺を通ずるまでもなく挨拶に出たが、固く引き締まった日に焼けた顔の色と云い、ショボショボした、人の好さそうな眼つきと云い、首の小さい、肩幅の広い体格と云い、どうしても一介の愚直な農夫である。
「国栖の昆布さんからお話がありましたので、先程からお待ちしていました」と、そう云う言葉さえ聞き取りにくい田舎訛りで、こちらが物を尋ねてもはかばかしい答えもせずに、ただ律義らしく時儀をして見せる。