路は、大台ヶ原山に源を発する吉野川の流れに沿うて下り、それがもう一本の渓流と合する二の股と云う辺へ来て二つに分れ、一つは真っすぐに入の波へ、一つは右へ折れて、そこからいよいよ三の公の谷へ這入る。
しかし入の波へ行く本道は「道」に違いないが、右へ折れる方は木深い杉林の中に、わずかにそれと人の足跡を辿れるくらいな筋が附いているだけである。
おまけに前夜降雨があって、二の股川の水嵩がにわかに殖え、丸木橋が落ちたり崩れかかったりしていて、激流の逆捲く岩の上を飛び飛びに、時には四つ這いに這わないと越えることが出来ない。